日本伝統の発酵食品の種類と特徴 ―調味料編―

最近ブームになった「菌活」という言葉をご存知ですか? 健康や美容に関心が高い人たちの間で人気が高まっているもので、カラダに良いはたらきがある「菌」を食事によって積極的に取り入れ、腸内環境を整えていこうという活動のことです。

実際、ここ数年「○○菌配合」とされるヨーグルトなどの乳製品や、料理に「塩麹」や「醤油麹」を使用するなど、さまざまなところでブームになっていますね。

最近の流行りのように扱われている発酵食品ですが、そもそも日本は伝統的に多くの発酵食品がある“発酵大国”です。

今回は、日本伝統の発酵調味料と、その種類についてご紹介しましょう。


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日本の発酵食品の歴史

発酵食品

発酵に必要なカビや細菌、酵母などの“微生物”が繁殖するためには、ある程度の水分や湿度が必要ですが、日本には梅雨があり比較的多湿な気候であることから非常に発酵に適しています。

さらに国土が縦に長いことによって地域ごとにさまざまな穀物が収穫されることから、それぞれの地域ごとに収穫した穀物の保存性を高めるために、昔から色々な発酵食品を産み出してきたようです。

日本では縄文時代のころから「口かみ」という原始的な方法でお酒を作っていたとされています。

その後、弥生時代になって主食として食べていた米飯にカビが生えたもの(麹カビ)の発酵力が酒造りに活用されるようになり、酒造り以外にも「醤(ひしお)」と呼ばれる醤油や味噌の原型となる発酵食品などが作り出されるようになりました。

この「麴カビ」の利用が日本の発酵食品の特徴ともいえます。実はこの「麹菌」、2006年に“日本醸造学会”によって「国菌」(国花→桜・菊、国鳥→キジ、のようなカンジですね)に指定されています。

日本酒はもちろんのこと、和食に欠かすことができない調味料、味噌や米酢、みりんや醤油などの調味料も、すべてこの「麹菌」を利用して作られているのです。


日本伝統の発酵食品

1. 日本酒 (米麹・酵母菌)

日本酒、発酵

日本酒の製造法の特徴の一つは、麹菌の一種である「米麹」を用いることです。

弥生時代には麴カビが使用されていたと考えられていますが、奈良時代713年に記された「播磨国風土記」によると「神社の神様に捧げた米飯が、古くなってカビが生えたので、それで酒を醸した」と記されていて、この時代にはすでに米麹を使用した日本酒が造られていたと考えられています。

日本酒造りは、原料であるお米に糖分が含まれていないため、お米のデンプン質を“糖化”させるために麹菌を加えてお米を糖化させ、そこに、「酵母」を加えてじっくり発酵させます。

このように、糖化と発酵が同時に行われる工程を「並行複発酵」と呼び、他のお酒と比較して非常に複雑で高度な醸造法で造られているのが特徴です。

ここで使用される酵母は、伝統的には各醸造所に住みついている「蔵つき酵母」「家つき酵母」を使用してきたのですが、明治時代以降になって、優良な清酒酵母を純粋培養して全国の酒蔵に提供する試みが始まり、「きょうかい酵母」という安定的な酵母や、各地域や酒蔵などでも清酒酵母の開発が行われています。

ちなみに「きょうかい酵母」は、日本醸造協会が頒布している日本酒や焼酎、ワインの酵母菌のことで、ブランド名はひらがなで「きょうかい酵母」と書くようですが、各酵母は「協会7号」とか「協会9号」と名前が付けられています。


2. 酢 (麹菌・酢酸菌)

「酢」の歴史はお酒の歴史と重なるところがあります。4~5世紀頃、中国からお酒を造る技術とともにお酢の作り方が伝えられ“和泉の国”(今の大阪府南部)で”いずみ酢”と呼ばれる今の米酢が造られるようになったのが始まりだといわれています。

お酢は「苦酒、加良佐介(からざけ)」とも呼ばれ、お酒との関わりが深く「米麹」で造られたお酒に「酢酸菌」を加えて発酵させることでお酢になります。つまり、お酒の延長線上にお酢が存在するというわけですね。

奈良時代に記された「万葉集」に、お酢料理である「なます」を詠んだ歌があり、この時代にはすでにお酢を使った料理が貴族たちの間で食されていたことが分かります。その後、鎌倉時代になるとお酢に魚介類を細く切って漬けて食べる料理が広まり、江戸時代に入ってからは一般庶民にもお酢が普及して様々な料理に用いられるようになりました。


3. みりん (麹菌)

みりんの起源に関してはいくつかの説がありますが、その一つは中国の「密淋(ミイリン)」と呼ばれる蜜がしたたるような甘いお酒があり、これが戦国時代になって琉球や九州地方に伝来し現在の本みりんになったという説。

もう一つは、日本に古くから存在した「練貫酒(ネリザケ)」という甘いお酒や白酒などに、腐敗を防止するために焼酎が加えられ、それが改善されて現在の本みりんになったという説です。

いずれにしてもみりんは、アルコール(焼酎)の中に「米麹」と蒸したもち米を加えて40~60日間熟成させ、もち米のデンプンを糖化しその糖分を溶け込ませたものです。当初、みりんは甘口の高級なお酒として受け入れられていたのですが、江戸時代中期以降になって、料理にコクやうまみを引き出すための調味料として使われるようになりました。


4. 味噌(麹菌・乳酸菌・酵母)

味噌、発酵、調味料

味噌の起源は、飛鳥時代に「遣唐使」などによって中国から稲作や仏教などとともに、「醤(ひしお)」と呼ばれる食品が伝わったところから始まったと考えられています。

「醤(ひしお)」には魚や肉を塩漬けにした動物性のものと、大豆などの穀物を塩漬けにした植物性のものがあり、そのうちの「穀醤」が改良されて、まだ豆の粒が残っている「醤」という意味の「未醤(みしお)」と呼ばれる日本独特の大豆発酵食品が作り出されて、「みしょう」→「みしょ」→「みそ」と変化し、最終的に「味噌(みそ)」と呼ばれるようになったとされています。

当時の味噌は現在のような調味料というより、大豆やその他の穀物を塩漬保存した保存食のようなもので、そのままつまんで食べられたようです。

今のように味噌汁が登場したのは鎌倉時代で、室町時代になると庶民の間でも味噌が食されるようになりました。「味噌」は、基本的には煮た大豆に塩と「麹菌」を混ぜて発酵させると出来上がります。その過程で「麹菌」はいろいろな酵素を作り出し、大豆のタンパク質やデンプンが分解されて「乳酸菌」「酵母」が増加し、香味やまろやかさを産み出します。

味噌造りに使用される麹菌には「米麹」、「豆麹」、「麦麹」などの種類があって、それぞれ「米味噌」や「豆味噌」、「麦味噌」といった種類ができます。このように味噌には日本各地で収穫できる原料や気候風土、食習慣などが影響して発達してきました。

5. 醤油 (麹菌・酵母菌・乳酸菌)

醤油、発酵、調味料

醤油の起源は、味噌と同じように飛鳥時代に中国から伝わった「醤(ひしお)」だと考えられています。

そして日本で味噌の原型である「未醤(みしお)」が改良されていく過程で、鎌倉時代に信州の禅僧の覚心というお坊さんが、宋(中国)から学んできた「径山寺(きんざんじ)味噌(未醤)」の製法で味噌造りが始まり、その後味噌桶の底に溜まっていた液体がとても美味しかったことから、今でいう「たまり醤油」になったといわれています。

室町時代の文献には、初めて「醤油」という文字が記されています。江戸時代までは紀州・播州などの上方の醤油が江戸に流通していたのですが、関東地方で「濃口しょうゆ」が誕生して以降、醤油が全国に広がっていきました。

醤油の作り方は、原料の大豆を蒸したものと小麦を炒ったものを「麹菌」とともに混ぜ3日間おきます。できあがった「麹」に食塩水を入れたもの(もろみ)を桶でかき混ぜながら数か月間発酵・熟成させます。その過程で「乳酸菌」「酵母菌」がはたらき、醤油のうまみ成分や香りを産み出してくれます。

こうして発酵・熟成したもろみを布で包み搾り出して火入れすると、醤油ができあがります。


和食の発酵パワー!

いかがでしたか? どれも私たちになじみがある調味料で、しかも和食に欠かすことができないものです。

日本に「稲作」が伝わって以来、先人たちは身近にある「米」に付いたカビ(米麹)を活用し、さまざまな発酵食品を作り出してきました。この「麹菌」が日本の「国菌」に指定されているというのも納得ですね。

こうして考えると、菌活のために・・・と、わざわざヨーグルトやチーズなどを食べなくても、日本伝統の和食を食べるだけでさまざまな発酵食品を摂取していることになるのですから、和食のチカラを見直すことができますね!